労働審判法

(平成16年5月12日法律第45号)

労働審判規則

労働審判員規則

 

(目的)
第一条 この法律は、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関し、裁判所において、裁判官及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で組織する委員会が、当事者の申立てにより、事件を審理し、調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、その解決に至らない場合には、労働審判(個別労働関係民事紛争について当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判をいう。以下同じ。)を行う手続(以下「労働審判手続」という。)を設けることにより、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする。

(管轄)
第二条 労働審判手続に係る事件(以下「労働審判事件」という。)は、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所、個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し若しくは最後に就業した当該事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所の管轄とする。

(移送)
第三条 裁判所は、労働審判事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。
2 裁判所は、労働審判事件がその管轄に属する場合においても、事件を処理するために適当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該労働審判事件の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

(代理人)
第四条 労働審判手続については、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ代理人となることができない。ただし、裁判所は、当事者の権利利益の保護及び労働審判手続の円滑な進行のために必要かつ相当と認めるときは、弁護士でない者を代理人とすることを許可することができる。
2 裁判所は、前項ただし書の規定による許可を取り消すことができる。

(労働審判手続の申立て)
第五条 当事者は、個別労働関係民事紛争の解決を図るため、裁判所に対し、労働審判手続の申立てをすることができる。
2 前項の申立ては、その趣旨及び理由を記載した書面でしなければならない。

(不適法な申立ての却下)
第六条 裁判所は、労働審判手続の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、その申立てを却下しなければならない。

(労働審判委員会)
第七条 裁判所は、労働審判官一人及び労働審判員二人で組織する労働審判委員会で労働審判手続を行う。

(労働審判官の指定)
第八条 労働審判官は、地方裁判所が当該地方裁判所の裁判官の中から指定する。

(労働審判員)
第九条 労働審判員は、この法律の定めるところにより、労働審判委員会が行う労働審判手続に関与し、中立かつ公正な立場において、労働審判事件を処理するために必要な職務を行う。
2 労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者のうちから任命する。
3 労働審判員は、非常勤とし、前項に規定するもののほか、その任免に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
4 労働審判員には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。

(労働審判員の指定)
第十条 労働審判委員会を組織する労働審判員は、労働審判事件ごとに、裁判所が指定する。
2 裁判所は、前項の規定により労働審判員を指定するに当たっては、労働審判員の有する知識経験その他の事情を総合的に勘案し、労働審判委員会における労働審判員の構成について適正を確保するように配慮しなければならない。

(労働審判員の除斥)
第十一条 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第二十三条、第二十五条及び第二十六条の規定は、労働審判員の除斥について準用する。

(決議等)
第十二条 労働審判委員会の決議は、過半数の意見による。
2 労働審判委員会の評議は、秘密とする。

(労働審判手続の指揮)
第十三条 労働審判手続は、労働審判官が指揮する。

(労働審判手続の期日)
第十四条 労働審判官は、労働審判手続の期日を定めて、事件の関係人を呼び出さなければならない。

(迅速な手続)
第十五条 労働審判委員会は、速やかに、当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をしなければならない。
2 労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、三回以内の期日において、審理を終結しなければならない。

(手続の非公開)
第十六条 労働審判手続は、公開しない。ただし、労働審判委員会は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。

(証拠調べ等)
第十七条 労働審判委員会は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認める証拠調べをすることができる。
2 証拠調べについては、民事訴訟の例による。

(調停が成立した場合の費用の負担)
第十八条 各当事者は、調停が成立した場合において、その支出した費用のうち調停条項中に費用の負担についての定めがないものを自ら負担するものとする。

(審理の終結)
第十九条 労働審判委員会は、審理を終結するときは、労働審判手続の期日においてその旨を宣言しなければならない。

(労働審判)
第二十条 労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて、労働審判を行う。
2 労働審判においては、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命じ、その他個別労働関係民事紛争の解決をするために相当と認める事項を定めることができる。
3 労働審判は、主文及び理由の要旨を記載した審判書を作成して行わなければならない。
4 前項の審判書は、当事者に送達しなければならない。この場合においては、労働審判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。
5 前項の規定による審判書の送達については、民事訴訟法第一編第五章第四節(第百四条及び第百十条から第百十三条までを除く。)の規定を準用する。
6 労働審判委員会は、相当と認めるときは、第三項の規定にかかわらず、審判書の作成に代えて、すべての当事者が出頭する労働審判手続の期日において労働審判の主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、労働審判を行うことができる。この場合においては、労働審判の効力は、告知された時に生ずる。
7 裁判所は、前項前段の規定により労働審判が行われたときは、裁判所書記官に、その主文及び理由の要旨を、調書に記載させなければならない。

(異議の申立て等)
第二十一条 当事者は、労働審判に対し、前条第四項の規定による審判書の送達又は同条第六項の規定による労働審判の告知を受けた日から二週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。
2 裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。
3 適法な異議の申立てがあったときは、労働審判は、その効力を失う。
4 適法な異議の申立てがないときは、労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
5 前項の場合において、各当事者は、その支出した費用のうち労働審判に費用の負担についての定めがないものを自ら負担するものとする。

(訴え提起の擬制)
第二十二条 労働審判に対し適法な異議の申立てがあったときは、労働審判手続の申立てに係る請求については、当該労働審判手続の申立ての時に、当該労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。
2 前項の規定により訴えの提起があったものとみなされる事件は、同項の地方裁判所の管轄に属する。
3 第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、民事訴訟法第百三十七条、第百三十八条及び第百五十八条の規定の適用については、第五条第二項の書面を訴状とみなす。

(労働審判の取消し)
第二十三条 第二十条第四項の規定により審判書を送達すべき場合において、次に掲げる事由があるときは、裁判所は、決定で、労働審判を取り消さなければならない。 一  当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないこと。
二  第二十条第五項において準用する民事訴訟法第百七条第一項の規定により送達をすることができないこと。
三  外国においてすべき送達について、第二十条第五項において準用する民事訴訟法第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認められること。
四  第二十条第五項において準用する民事訴訟法第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がないこと。


2 前条の規定は、前項の規定により労働審判が取り消された場合について準用する。

(労働審判によらない労働審判事件の終了)
第二十四条 労働審判委員会は、事案の性質に照らし、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判事件を終了させることができる。
2 第二十二条の規定は、前項の規定により労働審判事件が終了した場合について準用する。この場合において、同条第一項中「当該労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた」とあるのは、「労働審判事件が終了した際に当該労働審判事件が係属していた」と読み替えるものとする。

(費用の負担)
第二十五条 裁判所は、労働審判事件が終了した場合(第十八条及び第二十一条第五項に規定する場合を除く。)において、必要と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該労働審判事件に関する手続の費用の負担を命ずる決定をすることができる。

(事件の記録の閲覧等)
第二十六条 当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、労働審判事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は労働審判事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
2 民事訴訟法第九十一条第四項及び第五項並びに第九十二条の規定は、前項の記録について準用する。

(訴訟手続の中止)
第二十七条 労働審判手続の申立てがあった事件について訴訟が係属するときは、受訴裁判所は、労働審判事件が終了するまで訴訟手続を中止することができる。

(即時抗告)
第二十八条 第三条第一項及び第二項、第六条、第二十一条第二項、第二十三条第一項並びに第二十五条の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(非訟事件手続法及び民事調停法の準用)
第二十九条 労働審判事件に関しては、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第一編(第三条、第六条、第七条、第十条中民事訴訟に関する法令の規定中人証及び鑑定に関する規定を準用する部分、第十一条、第十三条、第十五条、第二十一条並びに第三十二条を除く。)並びに民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十一条、第十二条、第十六条及び第三十六条の規定を準用する。この場合において、非訟事件手続法第二十六条中「裁判前ノ手続及ビ裁判ノ告知ノ費用」とあるのは「労働審判事件ニ関スル手続ノ費用」と、民事調停法第十一条中「調停の」とあるのは「労働審判手続の」と、「調停委員会」とあるのは「労働審判委員会」と、「調停手続」とあるのは「労働審判手続」と、同法第十二条第一項中「調停委員会」とあるのは「労働審判委員会」と、「調停の」とあるのは「調停又は労働審判の」と、「調停前の措置」とあるのは「調停又は労働審判前の措置」と、同法第三十六条第一項中「前二条」とあるのは「労働審判法(平成十六年法律第号)第三十一条及び第三十二条」と読み替えるものとする。

(最高裁判所規則)
第三十条 この法律に定めるもののほか、労働審判手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

(不出頭に対する制裁)
第三十一条 労働審判官の呼出しを受けた事件の関係人が正当な理由がなく出頭しないときは、裁判所は、五万円以下の過料に処する。

(措置違反に対する制裁)
第三十二条 当事者が正当な理由がなく第二十九条において準用する民事調停法第十二条の規定による措置に従わないときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する。

(評議の秘密を漏らす罪)
第三十三条 労働審判員又は労働審判員であった者が正当な理由がなく評議の経過又は労働審判官若しくは労働審判員の意見若しくはその多少の数を漏らしたときは、三十万円以下の罰金に処する。

(人の秘密を漏らす罪)
第三十四条 労働審判員又は労働審判員であった者が正当な理由がなくその職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

附則

(施行期日)
第一条この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第九条の規定は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。







戻る

労働審判規則

(平成17年1月11日最高裁判所規則第2号)

(趣旨)
第一条 労働審判法(平成十六年法律第四十五号。以下「法」という。)による労働審判手続については、法に定めるもののほか、この規則の定めるところによる。

(当事者の責務)
第二条 当事者は、早期に主張及び証拠の提出をし、労働審判手続の計画的かつ迅速な進行に努め、信義に従い誠実に労働審判手続を追行しなければならない。

(管轄の合意の方式・法第二条)
第三条 法第二条の合意は、書面でしなければならない。

(移送の申立ての方式・法第三条)
第四条 法第三条の移送の申立ては、労働審判手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。
2 前項の申立てをするときは、申立ての理由を明らかにしなければならない。

(代理人の許可の申立ての方式・法第四条)
第五条 法第四条第一項ただし書の規定による許可の申立ては、代理人となるべき者の氏名、住所、職業及び本人との関係並びに当該申立ての理由を記載した書面でしなければならない。
2 前項の書面には、本人と代理人となるべき者との関係を証する文書を添付しなければならない。

(代理権の証明等・法第四条)
第六条 民事訴訟規則(平成八年最高裁判所規則第五号)第二十三条の規定は、労働審判手続における代理人について準用する。

(裁判所等に提出すべき書面)
第七条 民事訴訟規則第二条及び第三条(第一項第四号を除く。)の規定は、当事者又は代理人が裁判所又は労働審判委員会に提出すべき書面について準用する。

(通知)
第八条 労働審判手続における通知は、相当と認める方法によることができる。
2 裁判所書記官は、前項の通知をしたときは、その旨及び通知の方法を記録上明らかにしなければならない。
3 第一項の通知は、これを受けるべき者の所在が明らかでないとき、又はその者が外国に在るときは、することを要しない。この場合においては、裁判所書記官は、その事由を記録上明らかにしなければならない。

(労働審判手続の申立書の記載事項等・法第五条)
第九条 労働審判手続の申立書には、申立ての趣旨及び理由を記載するほか、次に掲げる事項を記載しなければならない。 一  予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
二  予想される争点ごとの証拠
三  当事者間においてされた交渉(あっせんその他の手続においてされたものを含む。)その他の申立てに至る経緯の概要
四  代理人(代理人がない場合にあっては、申立人)の住所の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)

2 前項の申立書に記載する申立ての理由は、申立てを特定するのに必要な事実及び申立てを理由づける具体的な事実を含むものでなければならない。
3 予想される争点についての証拠書類があるときは、その写しを第一項の申立書に添付しなければならない。
4 第一項の申立書を提出するには、これと同時に、相手方の数に三を加えた数の当該申立書の写し及び相手方の数と同数の前項の証拠書類の写しを提出しなければならない。

(労働審判手続の申立書の写し等の送付・法第五条)
第十条 裁判所は、法第六条の規定により労働審判手続の申立てを却下する場合を除き、前条第四項の規定により提出された申立書の写し及び証拠書類の写し(これとともに提出された証拠説明書を含む。)を相手方に送付しなければならない。ただし、労働審判手続の期日を経ないで法第二十四条第一項の規定により労働審判事件を終了させる場合は、この限りでない。

(申立ての取下げの方式等)
第十一条 労働審判手続の申立ての取下げは、労働審判手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。
2 労働審判手続の申立てが取り下げられた場合(相手方が出頭した労働審判手続の期日においてされた場合を除く。)は、裁判所書記官は、第九条第四項の申立書の写しの送付を受けた相手方に対し、その旨を通知しなければならない。

(労働審判員の除斥・法第十一条)
第十二条 民事訴訟規則第十条及び第十一条の規定は、労働審判員の除斥について準用する。

(労働審判手続の第一回の期日の指定・法第十四条)
第十三条 労働審判官は、特別の事由がある場合を除き、労働審判手続の申立てがされた日から四十日以内の日に労働審判手続の第一回の期日を指定しなければならない。

(答弁書の提出期限)
第十四条 労働審判官は、答弁書の提出をすべき期限を定めなければならない。
2 前項の期限は、答弁書に記載された事項について申立人が前条の期日(以下「第一回期日」という。)までに準備をするのに必要な期間をおいたものでなければならない。

(呼出状の記載事項)
第十五条 当事者に対する第一回期日の呼出状には、第一回期日の前にあらかじめ主張、証拠の申出及び証拠調べに必要な準備をすべき旨を記載しなければならない。
2 相手方に対する前項の呼出状には、同項に規定する事項のほか、前条第一項の期限までに答弁書を提出すべき旨を記載しなければならない。

(答弁書の提出等)
第十六条 相手方は、第十四条第一項の期限までに、次に掲げる事項を記載した答弁書を提出しなければならない。 一  申立ての趣旨に対する答弁
二  第九条第一項の申立書に記載された事実に対する認否
三  答弁を理由づける具体的な事実
四  予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
五  予想される争点ごとの証拠
六  当事者間においてされた交渉(あっせんその他の手続においてされたものを含む。)その他の申立てに至る経緯の概要
七  代理人(代理人がない場合にあっては、相手方)の住所の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)

2 予想される争点についての証拠書類があるときは、その写しを答弁書に添付しなければならない。
3 答弁書を提出するには、これと同時に、その写し三通を提出しなければならない。

(答弁に対する反論)
第十七条 相手方の答弁に対する反論(これに対する再反論等を含む。以下この項において同じ。)を要する場合には、労働審判手続の期日において口頭でするものとする。この場合において、反論をする者は、口頭での主張を補充する書面(以下「補充書面」という。)を提出することができる。 2 補充書面を提出するには、これと同時に、その写し三通を提出しなければならない。

(労働審判手続の申立書等の記載の方法)
第十八条 第九条第一項の申立書、答弁書又は補充書面は、できる限り、申立て又は答弁を理由づける事実についての主張とそれ以外の事実についての主張とを区別して、簡潔に記載しなければならない。

(補充書面の提出等の期限)
第十九条 労働審判官は、補充書面の提出又は証拠の申出をすべき期限を定めることができる。

(書類の送付)
第二十条 直送(当事者の相手方に対する直接の送付をいう。以下同じ。)その他の送付は、送付すべき書類の写しの交付又はその書類のファクシミリを利用しての送信によってする。
2 裁判所が当事者その他の関係人に対し送付すべき書類の送付に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。
3 当事者が次に掲げる書面を提出するときは、これについて直送をしなければならない。 一  答弁書
二  補充書面
三  申立ての趣旨又は理由の変更を記載した書面
四  証拠書類の写し(第九条第四項の規定により提出されたものを除く。)
五  証拠説明書(第九条第四項の証拠書類の写しとともに提出されたものを除く。)
六  第三十四条第一項の書面
七  第三十四条第二項の費用計算書

4 当事者が直送をしなければならない書類について、直送を困難とする事由その他相当とする事由があるときは、当該当事者は、裁判所に対し、当該書類の相手方への送付を裁判所書記官に行わせるよう申し出ることができる。

(労働審判手続の期日における手続等・法第十五条)
第二十一条 労働審判委員会は、第一回期日において、当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をし、第一回期日において行うことが可能な証拠調べを実施する。
2 労働審判官は、第一回期日において審理を終結できる場合又は第一回期日において法第二十四条第一項の規定により労働審判事件を終了させる場合を除き、次回期日を指定し、当該期日に行う手続及び当該期日までに準備すべきことを当事者との間で確認するものとする。

(調停)
第二十二条 労働審判委員会は、審理の終結に至るまで、労働審判手続の期日において調停を行うことができる。
2 裁判所書記官は、前項の調停において当事者間に合意が成立したときは、当該合意の内容並びに当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名を、調書に記載しなければならない。

(手続の分離又は併合)
第二十三条 労働審判委員会は、手続の分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
2 労働審判委員会は、手続の併合を命ずるときは、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならない。

(利害関係人の参加についての意見聴取)
第二十四条 労働審判委員会は、労働審判手続の結果について利害関係を有する者が労働審判手続に参加することを許可し、又は当該者を労働審判手続に参加させる場合には、あらかじめ当事者の意見を聴かなければならない。

(調書の作成等)
第二十五条 裁判所書記官は、労働審判手続の期日について、その経過の要領を記録上明らかにしなければならない。
2 裁判所書記官は、労働審判官が命じた場合には、労働審判手続の調書を作成しなければならない。
3 労働審判手続の調書には、次に掲げる事項を記載し、裁判所書記官が記名押印し、労働審判官が認印しなければならない。 一  事件の表示
二  労働審判官、労働審判員及び裁判所書記官の氏名
三  出頭した当事者及び代理人の氏名
四  期日の日時及び場所
五  申立ての取下げがあったときは、その旨
六  証拠調べが実施されたときは、その概要
七  審理の終結の宣言があったときは、その旨
八  労働審判官が記載を命じた事項

(申立ての趣旨又は理由の変更)
第二十六条 申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨又は理由を変更することができる。
2 申立ての趣旨又は理由の変更は、書面でしなければならない。
3 前項の書面を提出するには、これと同時に、その写し三通を提出しなければならない。
4 労働審判委員会は、申立ての趣旨又は理由を変更することにより三回以内の期日において審理を終結することが困難になると認めるときは、その変更を許さないことができる。

(主張及び証拠の提出の時期)
第二十七条 当事者は、やむを得ない事由がある場合を除き、労働審判手続の第二回の期日が終了するまでに、主張及び証拠書類の提出を終えなければならない。

(審判書・法第二十条)
第二十八条 法第二十条第三項の審判書には、主文及び理由の要旨を記載するほか、次に掲げる事項を記載し、労働審判委員会を構成する労働審判官及び労働審判員が記名押印しなければならない。 一  事件の表示
二  当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名
三  審判の年月日
四  裁判所の表示

2 前項の労働審判員が審判書に記名押印することに支障があるときは、労働審判官が審判書にその事由を付記して記名押印しなければならない。

(審判書の送達・法第二十条)
第二十九条 法第二十条第四項の規定による審判書の送達は、審判書の正本によってする。
2 民事訴訟規則第三十九条、第四十三条及び第四十四条の規定は、法第二十条第四項の規定による送達について準用する。

(審判書に代わる調書の記載事項・法第二十条)
第三十条 法第二十条第七項の調書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。 一  主文及び理由の要旨
二  当事者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名
三  第二十五条第三項各号に掲げる事項

(異議の申立ての方式等・法第二十一条)
第三十一条 法第二十一条第一項の異議の申立ては、書面でしなければならない。
2 法第二十一条第三項の規定により労働審判が効力を失ったときは、裁判所書記官は、異議の申立てをしていない当事者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

(訴状とみなす書面・法第二十二条)
第三十二条 法第二十二条第一項(法第二十三条第二項及び第二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、民事訴訟規則第五十六条から第五十八条までの規定の適用については、第九条第一項の申立書及び第二十六条第二項の書面を訴状とみなす。

(労働審判事件の終了の場合の処置・法第二十四条)
第三十三条 法第二十四条第一項の規定により労働審判事件が終了したときは、裁判所書記官は、その旨及び終了の年月日を記録上明らかにしなければならない。
2 前項に規定する場合においては、裁判所書記官は、当事者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、労働審判手続の期日において労働審判事件を終了した場合に、その期日に出頭していた当事者については、この限りでない。

(費用の負担の申立ての方式等・法第二十五条)
第三十四条 法第二十五条の申立ては、書面でしなければならない。
2 裁判所は、費用の裁判をするについて必要があると認めるときは、当事者に費用計算書の提出を命ずることができる。

(閲覧等の制限の申立ての方式等・法第二十六条) 第三十五条 民事訴訟規則第三十四条の規定は、法第二十六条第二項において準用する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十二条の規定による秘密記載部分の閲覧等について準用する。

附 則

(施行期日)
第一条  この規則は、法の施行の日から施行する。










戻る

労働審判員規則

(平成17年1月11日最高裁判所規則第2号)

 労働審判員規則を次のように定める。

(任命)
第一条 労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で六十八歳未満のものの中から、最高裁判所が任命する。ただし、特に必要がある場合においては、六十八歳未満の者であることを要しない。

(欠格事由)
第二条 次の各号のいずれかに該当する者は、労働審判員に任命することができない。 一  禁錮以上の刑に処せられた者
二  労働関係に関する法令の規定に違反し、罰金の刑に処せられた者
三  公務員として免職の懲戒処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
四  第六条第二項第二号又は第三号の規定により労働審判員を解任された者

(任期)
第三条 労働審判員の任期は、二年とする。

(所属等)
第四条 労働審判員の所属する地方裁判所(以下「所属地方裁判所」という。)は、最高裁判所が定める。

第五条 所属地方裁判所以外の他の地方裁判所における労働審判事件の処理のために特に必要がある場合においては、当該他の地方裁判所 と所属地方裁判所に共通する直近上級の裁判所が、所属地方裁判所の労働審判員に当該他の地方裁判所の労働審判員の職務を行わせること ができる。

(解任)
第六条 最高裁判所は、労働審判員が第二条第一号から第三号までのいずれかに該当するに至ったときは、これを解任しなければならない。
2 最高裁判所は、労働審判員が次の各号のいずれかに該当するときは、これを解任することができる。 一  心身の故障のため職務の執行ができないと認められるとき。
二  職務上の義務違反があると認められるとき。
三  中立かつ公正な立場において職務を行うことができないと認めるに足りる行為、労働審判手続に対する信頼を損なうおそれのある行為その他 の労働審判員たるに適しない行為があると認められるとき。

(旅費、日当及び宿泊料)
第七条 労働審判員が所属地方裁判所で職務を行う場合には、次項の規定により旅費を支給する。
2 旅費は、鉄道賃、船賃及び車賃の三種とし、その金額は、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二十五年法律第百十四号。次項において 「旅費法」という。)の規定に基づいて受ける旅費の金額と同一とする。
3 第一項に規定する場合を除き、労働審判員には、旅費、日当及び宿泊料を支給するものとし、その種類及び金額は、旅費法の規定に基づいて受ける旅費の種類及び金額と同一とする。
4 前三項に定めるもののほか、労働審判員に支給する旅費、日当及び宿泊料については、別に最高裁判所の定めるところによる。

附 則

(施行期日)
第一条 この規則は、労働審判法(平成十六年法律第四十五号。以下「法」という。)第九条の規定の施行の日(H17.11.11までの政令で定める日)から施行する。

(労働審判員の任期の特例)
第二条  この規則の施行後、法の施行の日までに任命される労働審判員の任期は、第三条の規定にかかわらず、同日から起算して二年を経過した日の前日までとする。