振動障害総合対策要綱

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振動障害総合対策の推進について

H5.3.31基発第203号


 振動障害総合対策については、昭和56年度から、4次にわたり振動障害防止対策、補償対策、社会復帰対策等振動障害に関する対策を総合的に推進してきたところであり、その結果、振動障害の新規認定者は漸次減少の傾向を示すなど、一定の成果がみられるところである。
 しかしながら、いまだ相当数の振動障害の発生がみられること等から引き続き振動障害総合対策を推進することとしたので、各局においては、別紙要綱に基づき、その効果的な推進に遺漏のないようにされたい。
 なお、本職より関係行政機関及び関係団体に対して、それぞれ別紙1及び2により、本対策の周知、協力方を要請したので了知されたい。
 おって、本通達をもって、平成2年3月30日付け基発第174号「第四次振動障害総合対策の推進について」を廃止する。

振動障害総合対策要綱



第1 振動障害防止対策の推進について


1 基本的な考え方

 振動障害防止対策については、各局における振動工具の取扱い状況や振動障害の発生状況に格差がみられるところである。したがって、各局においては、これまでの行政の進捗状況等を十分に把握、分析し、今後の振動障害防止対策の位置付けを明確にすること。
 その上で、各局においては、以下に示す事項に留意しつつ、各局の実情等を考慮し、重点対策の絞り込みや行政手法に工夫を凝らすなど、効果的な振動障害防止対策を推進すること。


2 振動障害防止推進計画の策定と評価

(1) 振動障害防止推進計画の策定

 各局においては、これまでの行政実績、振動障害の発生状況、「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」(昭和50年10月20日付け基発第608号)、「チェーンソー取扱い作業指針」(昭和50年10月20日付け基発第610号)等の普及徹底状況等を勘案し、必要に応じて、中長期的な観点に立った振動障害防止推進計画(以下「計画」という。)を策定すること。

 以下の[1]から[5]に、全国的な見地から計画の対象として取り上げることが適切と考えられる業種及び振動工具取扱い作業を揚げるので、各局における計画の対象業種及び工具の選定に当たって留意すること。

 [1]林業及び製材業 ……………チェーンソー及び刈払機を取扱う作業

 [2]建設業 ………………………さく岩機、ビックハンマー、コンクリートバイブレーター、コンクリートブレーカー、タイタンパー及びチッピングハンマーを取扱う作業

 [3]採石業 ………………………さく岩機及びチッピングハンマーを取扱う作業

 [4]鉱業(採石業を除く)…………さく岩機及びピックハンマーを取扱う作業

 [5]製造業のうち次のもの………携帯用研削盤、インパクトレンチ及びサンダーを取扱う作業

  窯業土石製品製造業
  鉄鋼業
  非鉄金属製造業
  金属製品製造業
  一般機械器具製造業
  電気機械器具製造業
  輸送用機械器具製造業



(2) 計画の進捗状況の把握

 計画を作成した局においては、振動工具を使用する事業場に対し、振動工具の使用等に関する自主点検表を配布、回収すること等により、計画の進捗状況の把握に努めること。



3 指導に当たっての重点事項

 事業場に対する指導に当たっては、次に掲げる事項を中心に、効果的な指導に努めること。

(1) 予防対策指針等の普及徹底

 「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」及び「チェーンソー取扱い作業指針」に掲げる作業管理、健康管理等について徹底を図ること。
 この際、低振動工具の開発普及状況に鑑み、低振動工具の選定の促進については、特に留意すること。


(2) 振動工具管理責任者の選任及び振動工具の整備点検の励行

 イ 振動工具各部の破損、異常音又は異常振動の有無、給油状態の良否等を定期的に点検し、振動工具を良好な状態で管理することを職務とする「振動工具管理責任者」を、各事業場ごとに選任し、当該職務の徹底を図らせること。

 ロ 振動工具の整備点検については、昭和61年12月15日付け労働衛生課長内翰「振動工具の整備点検基準について」に基づき実施するよう指導すること。


(3) 安全衛生推進者等の選任及び職務の徹底

 業種の区分及び事業場の規模に応じて、安全衛生推進者、衛生管理者等を選任させるとともに、その職務の徹底を図らせること。


(4) 健康管理の充実

 イ 事業者が、自主的に、振動障害の取扱い業務に係る特殊健康診断を実施するよう指導すること。この場合、定期の健康診断のみならず雇入れ時又は配置換えの際の健康診断も実施されるよう留意すること。

 ロ 健康診断の結果に基づく事後措置の徹底を図るよう指導すること。健康診断の結果が管理Bである労働者については、振動へのばく露を少なくするよう低振動工具の使用、作業時間の短縮等の配慮を図らせること。


(5) 振動工具取扱い作業者等に対する安全衛生教育の徹底

 イ チェーンソー取扱い作業者に対して、特別教育及び平成4年4月23日付け基発第260号「チェーンソーを用いて行う伐木等の業務従業者安全衛生教育について」に基づく教育の実施を徹底させること。

 ロ チェーンソー以外の振動工具取扱い作業者に対して、昭和58年5月20日付け基発第258号「チェーンソー以外の振動工具取扱い作業者に対する安全衛生教育について」に基づく教育の実施を徹底させること。

 ハ 建設業において、関係請負人が労働者に対し、いわゆる新規入場者教育を行う場合には振動障害防止に係る教育も併せて行うよう指導すること。


4 対策の推進に当たっての留意事項

 振動障害防止対策の円滑な推進を図るため、次の事項に留意すること。

(1) 対象事業場の把握及び好事例の収集等資料の整備

 上記2により計画の対象とした業種及び作業を中心に、引き続き対象事業場及び作業実態等の把握に努め、資料の整備を図ること。
 また、低振動化、遠隔化等作業方法の改善事例や作業管理、健康管理等に関する好事例の収集に努め、指導の際に参考とすること。

(2) 事業場に対する指導

 イ 各種安全衛生基準の履行確保のための監督指導を実施する際には、振動障害防止に係る指導基準についても、併せて指導を行うこと。
 なお、指導を行うに当たっては、振動工具取扱いにおける留意事項を簡潔に示した書面等を適宜活用すること。

 ロ 集団指導の実施、各種協議会の開催等に当たっては、振動障害防止に係るリーフレット等を配布すること等により、その効果的な実施を図ること。また、労災指定団体制度の積極的な活用に留意すること。



(3) 労働災害防止団体等に対する指導、援助

 労働災害防止団体及び事業者団体に対し、引き続き本要綱に基づく振動障害防止対策の推進について指導するとともに、適宜、振動障害防止に関する講習会、研究会等の開催を行うこと等について指導、援助を行うこと。


(4) 製造業者団体等に対する指導

 本省においては、チェーンソー、さく岩機等の製造業者団体等に対し、引き続き工具の低振動化について指導するとともに、製品のカタログ等に振動障害防止に係る留意事項等を盛り込むよう指導することとする。


(5) 行政施策の活用等

 イ 林業巡回特殊健康診断及び中小企業巡回特殊健康診断は、健康診断実施の定着化を図る上で有効な手段であることに留意し、これらの効果的な活用を図ること。

 ロ 林業については、林業・木材製造業労働災害防止協会との連携の下に、林業チェーンソー取扱労働者健診促進システムを活用し、特殊健康診断未受診者及びその事業者に対する受診勧奨の徹底を図ること。

 ハ 林業については、「チェーンソー取扱い作業指針」の普及徹底に資するため、平成元年10月27日付け基発第582号「チェーンソー取扱作業指導員について」に基づきチェーンソー取扱作業指導員の効果的な活用を図ること。


(6) 関係行政機関との連携

 イ 林業については、林業振動障害防止対策会議の効果的な運用を図ること。また、必要に応じ、労働災害発生状況に関する情報提供、対象事業場への指導に係る重点事項に対する協力要請を行う等営林局又は営林署と密接な連携を保つことに配意すること。

 ロ 建設業については、発注機関連絡会議等の効果的な活用により、引き続き振動障害防止対策の推進について理解と協力を求めること。

 ハ 本省においては、引き続き、振動障害対策推進関係省庁連絡協議会等により、関係省庁との連携を図ることとする。




第2 補償対策について

1 業務上外の認定

 振動障害の業務上外の認定については、迅速かつ適正な認定に努めること。
 このため、昭和52年5月28日付け基発第307号「振動障害の認定基準について」によるほか、特に次の点に留意すること。

(1) 保険給付の請求に係る労働者等の既往歴、作業従事歴等を十分把握すること。また、必要に応じ、主治医その他専門医の意見を十分聴くこと。

(2) 既往歴に振動障害の類似疾患が認められる場合、振動業務への従事期間が前記通達の基準に満たない場合及び振動業務を離脱した後相当期間を経過して発症した場合等については、必要に応じ鑑別診断を受けさせること。


2 療養

 振動障害の療養については、「振動障害の治療指針」(昭和61年10月9日付け基発第585号)を活用し、振動障害療養者がより適切な治療を受けることができるよう努めること。


3 保険給付

 振動障害に係る保険給付については、昭和61年11月28日付け基発第629号「振動障害に係る保険給付の適正化について」(一部改正:平成2年10月29日付け基発第664号)等に基づき、個々の振動障害療養者の症状を的確に把握する等により、適正な給付に努めること。
 なお、就労の機会の有無と休業補償給付の支給要件とは別個の事柄であって、労働者災害補償保険法上、就労の機会が確保されていないことを理由として、療養上休業の必要性がなくなった者について休業補償給付を継続して支給することはできないものであるから、主治医等に対してこの旨を十分周知し、給付の適正を期すること。





第3 社会復帰対策の推進について

 振動障害者の社会復帰については、「被災労働者の社会復帰対策要綱」(平成5年3月22日付け基発第172号「被災労働者の社会復帰対策の推進について」)に基づき次の対策を推進すること。


1 社会復帰指導の実施

 振動障害者のうち、療養を継続しながら就労することが可能と医師が認める者であって、社会復帰を希望するものに対し、的確な社会復帰指導を計画的に実施すること。

2 社会復帰援護措置の周知及び活用

 個別の社会復帰指導時における説明、その他広報等により、振動障害者社会復帰特別援護金等の各種社会復帰援護措置の周知及び活用の促進に努めること。

3 関係行政機関等との連携

 地方被災労働者社会復帰促進連絡会議の活用等により、振動障害者の社会復帰について職業安定機関及び職業能力開発機関の一層の理解と協力が得られるよう努めること。
 特に、林業における振動障害者の社会復帰に関しては、林業振動障害者職業復帰対策協議会及び同地区協議会の活用を図ること。
  



(別紙1および2略)